市長の「廃棄処分」の決定で足りる理由について

 市民の健康と福祉の増進及び観光振興を目的として、平成9年に須坂市の施設として建設され、誕生の折にこの施設を運営する会社として、第三セクターである叶{坂市健康福祉ランドが設立され運用されてきたことは承知しております。


 叶{坂市健康福祉ランドが取締役会等の法手続きを経てあつらえた施設機器を、施設建物の所有者たる須坂市が、叶{坂市健康福祉ランド特別清算に伴い買い取ることは、当事者間の財務的な処理であります。民法の添付制度における附合(§242・不動産。§243・動産)によって所有権の取得として処理されたことは、法手続きとして何ら問題はなかったと理解してます。


 特別清算されて消滅した叶{坂市健康福祉ランドと指定管理者として湯っ蔵んどの運営を任されている「蔵のさと温泉共同企業体」とは、法的関係は全く違うと思料しますが、須坂市の杓子定規の運用が気になります。四角四面の運用に拘泥することがベターではないことを唱えたいと思います。
 

 湯っ蔵んどが指定管理者になってから、三セクの運用と民間業者の経営では、斯くも違うものかと感心させられております。湯ぶねに浸かって観察しておりますと、三セク時代と異なることは、親子連れの客層が多くなったと感じます。入浴後の施設内に滞在する人が多くなり、さらに滞在時間も長くなったと感じます。従業員の応対もメリハリがあって気持ちが良いと利用される市民の皆さまから評判です。


 特別清算で旧叶{坂市健康福祉ランドから買い取った死海の水温水プールの法的処理は、民法で言う主物と従物。更には添付概念の附合により不動産プラス動産(民法第242条本文)で須坂市の物になった経緯があります。この度、指定管理者である「蔵のさと温泉共同企業体」に売渡す行為は、死海の水温水プール本体が性質や価値を著しく損なわなければ建物の外に持ち出せない。法的に可分か不可分と問えば不可分な性質を帯びた温水プールの売却であることを斟酌すればこれは法的に馴染まないと申せます。


 事実、先日現地視察でリニューアルの現場を見ましたが、温水プールは毀損して持ち出されているではありませんか。取り壊さねば搬出できないプールを社会通念上誰が107万円の大金と、更に取り壊し料を負担してまで買うでしょうか。これこそ社会的妥当性のない売買行為であり、無効であると断じざるを得ないのであります。


 今回の湯っ蔵んどリニューアルについては、市長は死海の水温水プールにこだわり過ぎております。平成21年3月議会で石合議員への答弁として「死海の水の存在が、湯っ蔵んど全体及び須坂市が内外にPRでき、イメージアップにつながったものと思っております。この点については、お金には換算できない死海の水の貢献であるというふうに思っています。」この答弁こそが全てです。将にそのとおりです。


 湯っ蔵んどの入館者数は年間凡そ30万人前後を数えます。誇るべき数字であります。三木市長が就任された平成16年の須坂市の観光地利用者は凡そ77万人。翌年には103万人、そして昨年の平成21年度には122万人の人々が、この須坂を訪れてくれたのであります。実数は優に200万人を越すと思われます。

 この122万人の数を、商いに結び付けられるか否かは市長の役目ではありません。それぞれの市民が、経営者が、商人が商才によって、如何に商いに結びつけるかであり、将に商人の手腕にかかっておるものと思います。


 平成16年当時に比べると実に近年は45万人もの多くの人がこの須坂に訪れている実績を私は認めます。ハッチファミリーの人気、死海の水温水プールの総合的話題づくりの成果であると思います。これは市長が陣頭指揮をとった成果なのであります。


 市長が、旧叶{坂市健康福祉ランドから買い上げた費用を幾らかでも回収しようとされる、市民向けのアピールは痛いほど判りますが、本件については市長の「死海の水温水プールの払下げ」ではなく「死海の水温水プールは廃棄処分」とする決定で足りると思います。
 
 行政行為の選択としてどちらも合法的な処分でありますが、私は後者(廃棄処分)を支持します。