忘るる勿れふるさとの山並みを


 この時期、根子岳山頂付近は雲に覆われて中々根子岳全景を撮影できることは稀である。原因は根子岳自身が太平洋気候と日本海気候のぶつかりあう峰であることから、この峰で雲が湧くためであろうか。峰ノ原でゴルフをなされたことがあられる方々は、根子岳の空模様は午前中と午後とでは変化する現象を、具体的には関東平野からの陸風と越後平野を越えて来る日本海の海風を、風向きと、膚に吹き付ける風の違いや立木の葉の揺らめきが眼(まなこ)で感じられたことでしょう。

 今日は久々の快晴に恵まれ、太陽が西に傾く時刻を狙って、根子岳の峰に雲の無い雄姿を捉えることが出来ました。この時期は中々全貌を捉えることが難しい・・・

 この根子岳の頂きに積もった雪こそが、実は自然がもたらしてくれる宝である「水」に外ならない。この雪が徐々に融けて水に成り地中に潜り込み、永い歳月を経て須坂市の扇状地の地中を潤し、屋代線線路付近の地籍で清水となって湧く。根子岳の恵とも言えます。

 その意味では、里山の更に深山に鎮座する根子岳。須坂市の奥山である根子岳連峰に降り積もった雪は、須坂市の将に「水甕」であると言えます。

 須坂の子らは、かって小学校5年生になると集団登山でこの根子岳に登り、中学生のキャンプ実習で再度根子岳に登るのが慣わしでありました・・・

 南に根子岳を仰ぎ、千曲川(越後に流れ込むと信濃川と呼称が変わります)を挟んで、北に信濃五岳(戸隠山、飯綱山、黒姫山、妙高山(越後の山)と斑尾山)の雄姿に感動し、西に横たわる北アルプスの連峰に畏敬を抱きながら、「みすずかる信濃の空」の蒼天のエキスを胸一杯吸い込みながら育つことは、人格形成に多大な影響を与えるものであるが、北信の子らはすんなりとこの自然のもたらしを受け入れて育つ・・・

 今年も数多の卒業生が青雲の志を抱いてこの須坂から巣立った。どうか故郷の山河を心に刻まれて、夫々の志しや希望の成就に向けて青春まっしぐらであって欲しい。
 
2012/3/27記す