市長の権限とりわけ委員会に対する総合調整権について


市議会議員 佐藤壽三郎

 今議会一般質問で7名もの議員が『学校給食センター建設』について、「教育委員会が決めた選定地を市長が強引に変更したとして、議員から時系列資料を要求して変更日の経緯を質していたが、これは議員である以上、市長が法によって認められている、「統括代表権」や「総合調整権」に照し合せて、ことの経過に違法性があるか否かを捉えなくてはなるまい。この作業を怠って徒に弁論を結果的に肥大化することは、何ら解決の糸口が見えてこない空転状態に陥る。

 地方自治体は二元代表制を敷いている。首長と議員はそれぞれに選挙され、市民の代表としての地位を得て、それぞれの役目を負っている。須坂市の意思は市民から選挙によって選ばれた、市長と議員(議会)によって決めていく。これが「間接民主主義」制度であることを認識しなければならない。議会は先ず議員の集合体の機関であり、個々の議員の権限は首長に対峙する場合に、極めて弱いものであることを謙虚に自覚しなければ、市政は一歩も前に進まないこととなる。

 以下の表示において、首長を分かり易くするため、茲では市長と表示するが、市長は須坂市を総括しこれを代表して、須坂市の事務を「自らの判断と責任」で管理し執行する(執行できる)強大な権限を法に依って付与されていることを自認すべきである。【地自法147条、148条、憲法93条】

○市長の権限
@ 統括代表権
○市長は須坂市を統括し、これを代表する。【地自法147条】
○市長は統括の下に、市の事務の全般について、市長が総合的統一を確保する権限を有するとされ、単なる各執行機関についても総合調整的な管理機関に留まらず、他の執行機関は当然、議会、住民の全てを含めて、当該団体の事務についてこれを統御し、その最終一体性を保持する権限を有するとされている。二元代表制の下における市長の優位性として捉えなければならない。

A 事務の管理及び執行権
○須坂市の事務を管理し執行する。【地自法148条】

B 総合調整権
○須坂市にはその他の執行機関として、教育委員会、選挙管理委員会、公平委員会、監査委員、農業委員会、固定資産評価審査委員会がある。これは政治的中立を保つために市長とは距離を置いていて設置された組織であり、それぞれが独立機関である。設置理由は、一面、市長の独裁を抑止するための組織の分散と捉えられる。原則としてそれぞれ独立機関であるが、行政執行の一体性、総合性を確保するため、市長に組織・予算等を通じて執行機関内部での綜合調整を行う権限が与えられている。


本6月定例会で上程された学校給食センター建設に関わる補正予算に絡んでの、同施設候補地の選定については、言わば学校給食提供の設備や施設であることからして、市長が強引にリーダーシップを発揮したからとしても、教育委員会の教育の政治的中立性を損ねるものとは断じがたいと思料する。


【地自法157条、180条の4、221条、238条】
C 規則制定権
○市長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。【地自法15条】

D 職員の指揮監督権
○普通地方公共団体の長は、その補助機関である職員を指揮監督する。
【地自法154条】

E 職員の任免権
○市長は、副市長、会計管理者、職員を任免する。
【地自法162条、168条2、172条2】

F 事務組織権
○市長は、その権限に属する事務を分掌させるため、必要な事務組織を設けることができる。【地自法155条、158条】

G 管理に属する行政庁の処分の取消・停止権
○須坂市行政手続条例における処分(申請に対する処分・不利益処分)行政指導、届出、命令等。

H 公共的団体等の監督権
○須坂市が指定管理者制度を導入したことにより指定管理者等が該当する。

【参考文献:行政法・東京リーガルマインド。地方自治・学陽書房。首長の「執行権」の法的範囲について・早稲田大学大学院公共経営研究科 草間 剛著 】

2016年6月30日