故郷の魂を、中央の役人はいじくりまわすことなかれ

須坂市議会議員 佐 藤 壽三郎

 

 「教育基本法の改正について検討してきた文部科学相の諮問機関、中央教育審議会(鳥居泰彦会長)は十四日、「国や郷土を愛する心」や「公共心」「伝統、文化の尊重」などを新たに基本理念として盛り込んだ中間報告をまとめ、遠山敦子文科相に提出した。報告は「新しい時代を切り開くたくましい日本人を育成する観点から重要な理念や原則が不十分」として現行法の見直しを提言。家庭の役割や責任についても新たな規定を求めている内容だそうですが、教育基本法の改正に疑義を感じます。

 

  一つは、憲法の理念の現実を目標に掲げた教育基本法という法律は、とりわけ憲法と附従性や随伴性を求められる法律であると思います。憲法の改正が無いのにこの法律の中味をかえることは、憲法の変遷にほかなりません。即ち憲法を改正したに等しい行為であります。
  教育という普遍性を求められる、いわば国の要諦を謳った法律は、安易に変えるべきでないと思います。憲法の改正をまって教育基本法は変えられるならともかく、この手順を違えることは許されません。憲法を改正せんがための「堀を埋める」姑息な手法と申せます。

 

次に「国や郷土を愛する心」や「公共心」「伝統、文化の尊重」を法文化することによって、これが市民が特に青少年の心に芽生えるかということです。「国や郷土を愛する心」や「公共心」「伝統、文化の尊重」は、地縁や血縁と何十年あるいは何百年という時の経過によって適えられるものであり、時代の篩(ふるい)にかかったものが今日まで伝えられていることを忘れてはなりません。

故郷の山河を無視した中央のお役人は、何でも全国一律の平準化した「国や郷土を愛する心」や「公共心」「伝統、文化の尊重」を求めることは、国民を睥睨(へいげい)した行為であり、国民や伝統・文化を冒涜した所業と申せます。
  こんなことをしていたのでは、日本は亡国につながると思います。

 

郷土を愛することは須坂を愛することであり、須坂を故郷と感ずる人々によって重代の人々の汗と血が醸成されたものであり、人を思いやるこころや伝統文化の尊重は、これが須坂の伝統であり、文化であると感じた人々の手によって、時代を超えて保持されなければならないものと思います。政府役人が机上で考える「国や郷土を愛する心」や「公共心」「伝統、文化の尊重」論は、標語の羅列にしか思えません。中央政府の中央集権統治のためだけの手段としての「国や郷土を愛する心」や「公共心」「伝統、文化の尊重」論は、戦前ならばともかく、新憲法下の国民は到底支持しないと確信します。少なくともこの須坂では通用しません。