この時こそ憲法第9条の正確な概念の把握が必要

市議会議員 佐藤 壽三郎

  市議会議員である以上、安全保障関連法案の動向が気にかかります。大いに関心を寄せる必要があります。そこで学生時代に読んだ「法学教室」を読み返してみようと思いました。

  「法学教室」はご存知のとおり、法律専門出版社有斐閣から、東西一流の法学部の教授が、法律家を志す若き法学徒を対象に、「正確な概念の把握」と「テーマを設けて問題点の論点を見極める」ために、執筆された純粋な法律学問書であります。通称第1期・別冊ジュリスト8冊と、第2期8冊の併せて16冊が時間を置いて発刊されました。当時、法律の勉強会を主宰されていた先輩から読むことを勧められて、貧乏学生でしたが無理して全巻購入しました。

 今回はこの16冊から、憲法第9条に関わる論文箇所を摘出して、「正確な概念の再認識」のために、書棚から引き出し読み返してみました。当時、二十歳代そこそこの私にはとて、「法学教室」は極めて難解な内容であり、何遍も読んでも意味が解からず、活字とにらめっこで、頁内の行間を行ったり来たりするだけでした。読んでいる内に日付が変り、FM東京の深夜放送「JET STTEAM」が始まってしまい、聞き流しながらも眼は本とにらめっこする毎日でした。時間だけが徒に過ぎるも、青春時代はたっぷり人生の時間があると信じていたあの頃、時間の過ぎ去ることの怖さはなく、もっと知識を習得したい気持ちとは裏腹に、全く歯が立たない法律用語の基礎知識不足や、理解できない気持ちの焦りとの空転が、交錯した苦い思い出が蘇えります。
  あれからかれこれ40余年・・・書棚にあるこれらの本も歳月を経てすっかり日焼けして(黄ばんで)います。然し、頁をめくると不思議なことにあの頃のまっさらな頁が現われました・・・

  今回、摘出して読み返した箇所は以下のとおりです。
○「法学教室」(別冊ジュリスト・有斐閣)掲載分として
   @日本国憲法における自衛隊についての種々の見解を挙げ、且つ論評せよ (No.1-94頁〜/佐藤功・成蹊大学教授)
   A自衛隊の国連軍への参加と第九条 (No.3-p14〜/田畑茂二郎・京都大学教授)
   B憲法尊重擁護の義務と国民の抵抗権 (No.5-p124〜/結城光太郎・山形大学助教授)
   C憲法第九条の思想史的源流 (No.6-p19〜/田畑忍・同志社大学教授)
   D憲法の改正と変遷 (No.6−p86〜/芦部信喜・東京大学助教授)

○法学教室<第2期・有斐閣)掲載分として
   E憲法の変遷と憲法慣習 (1号p20〜/川添利幸・中央大学教授)
   F安保条約と憲法第九条 (5号p110/隅野隆徳 専修大学助教授)
   G憲法改正の限界 (8号p118〜/寿田竜輔 成城大学教授)  
    ※文中、教授の在職大学・職名は法学教室発行時を其の侭掲載しました。

 これら一連の関係する論文等を読んで、憲法第9条の正確な概念の把握を再認識し、小職の一連の「改憲手続に異議がある」発言は間違っていないと確信します。改めて政府が強行しようとする安全保障関連法案の裁決は、憲法第9条の平和主義を逸脱した全く異質の憲法第9条になってしまい、これらの法の運用によって国家も必然異質な方向に歩み出す危険性を慮るとき、日本は近隣諸国に忌わしい戦争を思い返させ、無用な警戒心を抱かせることとなり、疑心暗鬼による信用を喪失し、結果的に我が国が亡国に繋がる暴挙であり容認することはできません。速やかに廃案すべきものと言上します。【平成27年9月10日記す。】

 信濃毎日は10月2日付記事で、長野県出身でともに弁護士出身者として最高裁判事を務めた才口千晴弁護士(77)=長野市出身、那須弘平弁護士(73)=伊那市出身=が1日までに信濃毎日の取材に応じられて、集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法について「憲法違反の疑いが強い」との認識を示された。同法については違憲判断を求めて提訴を検討する動きが県内外にあり、才口弁護士は「裁判や選挙を通じて法律を廃止に追い込む運動を途絶えさせてはならない」と述べたとありました。将に法律の番人としての心意気未だ冷めずと感じ、多くの国民は揺るがない論理一貫の心根を頼もしく感じると確信します。

平成27年(2015年)10月5日