結婚願望20代で低下の課題

市議会議員 佐藤 壽三郎


20代の「結婚をしたくない」理由が、具体的に示されていない点であるが、経済格差や貧困の問題だけで片付けられない問題があるのではないか。
私は20代を都会で過ごした。小学生のときから温めていた志である、上京し書生をしながら大学で法律を学んで資格を取り、須坂に一日でも早く戻って政治家になることを果すためのものであった。結婚願望は更々抱かず、只管法律が学べる機会を得たことが嬉しかった。(将来、所帯をもつなら資格を取得した後に郷里の女性を娶ることだけは決めていた。)

ところで、地方からの上京組は23歳前後のときにUターンをしないと、郷里に帰っても就職適齢期を逃してしまうこととなる。Uターンか都会で家庭を持つかが人生の大きなターニングポイントであることは少しも変わっていない。同級生のそれも長男である大半はこの鉄則を守ってUターンしたものである。

私は30歳にして故郷にUターンしたが、郷里に帰って感じたことは、公務員には年齢的に選択肢は無かった。民間会社も中途半端な年齢であり、20代を法律の修得と資格の受験に明け暮れていた経歴が災いしてか、面接を受けても悉く不合格。そこで自営業として身を立てることとした。然し別に人生を悲観するような気持ちは更々無かった。寧ろ二十歳代に目標に向かっての充実した日々を送れたことが誇りであった。学問修学の機会を与えてくれた母や家族、大学から資格の受験時期の経済的支援を賜った、恩師に対する感謝の気持ちが勝った。

上京する際に高校の恩師から「男子は28歳になるまで結婚など考えるな。只管、学問に勤しめ。」と言われたことを思いだす。「結婚を考えたら大志を諦めて、女房や生まれてくるこどものために、先ず経済的な環境を満たすことが男である」との諭しでもあった。このことは大変重い教えで我が生涯において極めて有用であった。

生涯の伴侶を見つけ出すことは、決して構えて叶えるものではない。十人十色様々な出会いがあり、様々な人生観があるからである。然し老いて沁々振り返ると、結果的に「宿命的な出会い」と誇張するのが世の倣(なら)いでもある。「スポーツカーよりライトバン」の譬えではないが、絶世の美人より健康な人。気遣いと優しさを秘めた伴侶を探す旅路と出会いを、後年になって世間は縁(えにし)と言うのではないかな。舟木一夫の「この世に一人いる筈のまだ見ぬ君をこうるかな・・・」の歌詞が懐かしいが、若人よ何事もチャンスを逃がさない闘志を持つことが肝要と心得られよ。

平成28年(2016年)12月31日