赤トンボ 舞うや大空 蒼眩し  寿茶    

會報 ことぶき月報 (20)初版 (2000年10月号) ダイジェスト
(佐藤壽三郎市議会議員活動報告)


【地方分権時代のもたらすもの(2)】

『地方議員の資質と役割』についての考察

 地方自治は、国政と違って公選された首長と公選された議員で成り立っています。議会と首長(市長)は両輪に例えられる由縁です。しかし両者を比較した場合に、住民は市長(行政部局)から行政サービスの提供を直接受けることもあり、市長の行動が派手に映ります。議会は請願や陳情での接触、一般質問のTV放映以外は馴染みが薄いと言われます。そもそも地方自治は、議会を通じて個々の議員が積極的(能動的)に、市長(執行機関)にものを申し、須坂市に止まらず広域的な政策の提案をし、一方事業計画の進捗、事業完了後の追跡に至るまで目付する議活動でなければいけないと感じています。当然その結果として、議員も政策を主張する以上、首長と同等に政治責任を負う気構えが必要です。議員は単なるアジテーター(扇動者)であってはならないからです。


 地方議員は 「地方議会の本来の機能・役割である立法、財政、行政監督に帰れ」 と佐藤竺成蹊大学名誉教授は提唱されます。小職が議員になって感じたことは、市議会議員は大半が法律家でもなければ財政通でもない言わば素人集団であるということです。しかし行政の組織や機構が複雑で多様化している現在、議会という現場に居る眼からみても、相当の学習欲がなければ議員は勤まりません。大半の議員は行政に対する受動的(行政側から示された範囲内の報告)にチェックこそが議員の本来の役割だと割り切ります。今回マスコミから9月須坂市議会が注目されましたが、それは議会の本来の機能の復権を図ろうとする小職ほか一期議員等と、議員を永く務めるうちに失せる初心や、居心地が良く確かである『現在』に安住している議員との差にあったと思います。


 今回の地方自治法改正により、地方議会の権能として機関事務廃止後の事務区分として自治事務と法定受託事務の2種が示されました。自治事務の増加は条例制定権の拡大を意味します。また議会の検閲検査権(自治法98条)や調査権(自治法100条)などの執行機関に対する監視的権能は自治事務の場合にはすべてに及ぶとされており、機関委任事務には及ばなかった議会の調査権が法定受託事務に及ぶこととなりました。法律全般にわたる基礎力や洞察力が地方議員にも要求される時代がきたのです。市民から、 「本会議や委員会で質問をしない、できない議員は、議員の資質と能力を欠く。」と言われても当然です。況んや地方議会で囁かれる「一般質問の原稿を執行機関の職員に書かせて、恰も持論の如く棒読する議員」などは、議員の資質以前のお話しであり、この類いの議員が厚顔にも議会に居ることは、議会や市民を愚弄していると言われても仕方ありません。


 議会の検閲検査権や調査権を行使するにつけても、議員の法的知識の研鑽が必要です。小職は現在の市役所東庁舎を議会棟とし、「議員に個別の自習室」を与えることを提唱しています。さらに議会事務局の充実強化と事務局員の能力向上を図るために、行政執行機関からの独立性を確保し、専門的能力促進のために他市との相互の人事交流や充実した研修の実施をなすべきであります。議会は議員と事務局職員が一体となって「政策の立案、施策、実行後の検証」を練り研究する時間を持つべきであります。それらの成果を議会を通して実践してこそ、そこに地方議会の真価があると申せます。もはや「片手間議員」とか「市議会議員は素人集団で良し」とする、即ち「須坂の名士」とか「名誉職」の時代ではなく、市民は、市議会議員の資質として、専門性、理念、迅速な決断力と実行力が求められています。「須坂の利益」は近視的に或いは遠視的に何かを念頭におき、市議会議員の役割を一つ一つ果たすことが大切なことと思います。併せて議会事務職員の行政サイドからの身分の独立と保障を図ることこそが、議会の活性化には不可欠な要件でが、これは地方議会の抱える大きな課題でもあります。


【参考文献】 法学教室1号19頁、4号118頁、5号193頁有斐閣、法学教室第二期3号92頁、6号28頁有斐閣、法学教室2 09、34頁有斐閣、月刊地方分権1616頁・ぎょうせい、地方自治の法としくみp87~・学陽書房、地方自治の要点p4 4~・学陽書房、地方自治制度p148~・学陽書房 法学教室217頁20~,218頁5~,226頁4~有斐閣



発行日・配信日:平成12年10月20日
発行人 市議会議員 佐 藤 壽三郎  
発行責任者 竹 村 徹 志



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