法曹を志した青春時代・・・


 


 弁護士の書生になって、田舎出の私は初めて「弁護士バッジ」をこの手で触らせて頂いた。何やら筋が四方八方に輝きちる中央に、天秤がデザインされていた。正義の女神が目隠しをして、右手に剣を下げ、左手に天秤を持っている「女神像」が、この世にあることをその後知ることとなるが、上京して間も無い僕はそんな知識はありません。
「八方に輝きちる筋はひまわりをデザイン化したものであり、ひまわりは正義と自由を、秤は公正と平等を意味している」と先生が教えて下さいましたが、弁護士という名前を聞いていたことはあっても、弁護士と話したことも無く、況してや「弁護士バッジ」を触ったことも無かった私には、手のひらで感じる「弁護士バッジ」は、ずっしりと重みのある弁護士記章でした・・・

 ある日、先生のお供で裁判所に行きますと、三つ揃いで風呂敷を小脇に抱えた紳士が目に留まりました。裁判所の庭内を革靴を履いて背筋を伸ばして颯爽と歩く姿は只者ではない。胸には今までみたことのない「白いバッジ」が眩しかった。先生にお聞きすると「検事」さんであり、胸に着けているバッジは「秋霜烈日」を徴ている検察官記章であり、検事が与る犯罪に敢然と正義と公平へのあくなき追求をする証しであると教えていただいた。
「ふ〜ん。あの人が高校の恩師が語り聞かせてくれた憧れの職業である検事さんか。検事さんて偉い人なんだなぁ」と将来は三つ揃えを着て、胸には「秋霜烈日」のバッジを着けれる人になりたいと思った・・・

 19歳で機会を得て上京した私には、生れた初めて見るものや、触ることが出来るものに遭遇し驚きの毎日であった。法曹を志す法学徒が憧れる職業のバッジを身近でみることが青春時代の大きな励みとなった・・・


2010/09/24 ()